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付録1-3  「非理性的信念に対する理性的信念の詳しい解説」

                      非理性的信念   〜ねばならない型の思考
                      理性的信念     〜であることにこしたことはない型の信念

非理性的信念 非理性的な信念の意味 理性的な信念(こう考えていきましょう)
@受容欲求 皆から愛され受容されねばならない 人に愛されることと自分の人間的価値は別のものである。

他人が自分にしてほしいと思っていることよりも、自分が本当にした いことは何かを自分に問うこと。人の要求に支配される人生ではなくて、自分が自分の人生の主人公であること を忘れないこと。愛されるより愛することが重要である。
A自己期待 全ての点で優れていなければならない 成功と自分の本質的な価値とは別のものである。

成功とか失敗とかいうことがあなたの価値を決めるものではない。 また、他人より上に立つことがあなたの価値を決めるのでもない。もしそのように考えているとしたら、 それはただあなたがそう思っているだけである。重要なのは、自分がやりたいことに最善をつくそうとする ことである。実際問題として、あらゆる領域で有能である人などいない。
B非難 悪いことをした人々は、厳しく罰しなければならない 非難と責任は別のものである。

非難は解決ではなく不快な感情を生じさせる。悪いことをした 人を非難するよりも、また同じことを繰り返さないためにどのようにすればよいかを考えてアドヴァイス することが重要である。自分が悪いことをした場合も、自分を非難することより次回はどうしたらよい か考えてそれを実行することが重要である。
C欲求不満 全てのものごとが自分の思い通りに運ばなければならない 欲求不満は生きている限り避けられないものである。

ものごとはうまくいくことにこしたことはないが、うまくいかな かったからといって、いらいらする必要はない。ただできることをやればよい。何もつくす手がなければ 「生きていればこういうこともあるさ」とその状況を受け入れることが役立つ。「こんなことはあっては ならない」などと考えて自分をわざわざ怒らせても問題は解決しない。多くの人があなたと同じ様な欲求 不満を感じており、あなただけが不幸なのではないことを忘れないこと。うまくいかないことに対して 怒ったりせずに対処している人がいることを忘れないこと。またあなたもそのようにできることを忘れ ないこと。
D情緒的無責任 自分の感情は外部刺激により統制されており、自分ではコントロールできないものである 不快な感情は、外部の人や物が生み出したものではなく、自分自身の 不合理な信念が生み出したものである。

心配や怒り、憂鬱や罪悪感にとらわれた場合でも、自分のどういう 信念(考え方)がその不快な感情を生み出したのかを客観的に眺め、その信念を合理的(自分を苦しめない)なもの に再構築し、不快な感情の程度を弱くできる。 
E不安 何かが危険で怖いことに思えたときは、我を忘れて不安に陥るのは当然だ 不安や心配は、これからひどいことになるだとうということを示して いるのではなくて、その場合はどうするかを考えるためのサインである。

不安や心配は完全になくさなければならないものではなく、上手に付き合っていくものである。不安 や心配を感じる自分を非難してはいけない。何ができるかを考えて、できることをただやるのである。 
F問題回避 障害物や責任のある仕事は逃げた方が楽である 困難や責任を回避するのは、長い目で見た場合有効ではない。

困難なことを回避していると、たいていの場合、活動が生きがいにつながらず、次第に自信を 失っていく。目の前にある問題を自分にできる小さなステップに分解し、そのステップを一歩ずつ進んで いくこと。一度に全てをやろうと考えないこと。少しずつ困難に立ち向かっていくことが自信を育ててくれる。 
G依存 誰か、あるいは何かに頼らないとやっていけない 誰か(あるいは何か)に頼っていないと人生がメチャクチャに なる、ということはない。

必要に応じて、誰かから援助してもらうことは重要である。しかし、いつでも、どこでも、その 誰かがいないと何もできないということではない。この区別をしておくことは重要である。 
H過去の一般化 過去において人生に大きな影響を与えたできごとは、今に至っても その人の感情や行動を決定するものである 過去の影響力は、現在の努力で克服できる。

過去はすでに過ぎてしまったのだということを忘れないこと。過去が、現在や未来に対して 魔法のような絶対的な影響力を持っているということはない。過去に失敗したからといって、これから ずっと成功できないというとこではない。今すぐに別人のようになれるわけではないが、成功に向けて 一歩ずつ進んでいくことで最終的な目標を手に入れることができる。たとえ、その途中で失敗してもである。 
I他人の問題へのとらわれ 他の人々の問題や障害のために、自分の感情がコントロールでき ないのは当然だ 他人の問題と自分の感情の起伏は別なものである。

不幸な人がいたら、自分も一緒に落ち込むのではなく、その人のために自分ができることを考え、 実行することが大切である。他人の問題があなたを憂鬱にしたり悲しくさせたりするのではなく、あなたが 自分で自分を憂鬱にしたり悲しくさせたりしていることを忘れないこと。 
J完全主義 何でも完璧でなければならない 完全を求めて最善をつくすように努めることと、完全で なければならないということは別なことである。

人間には完全ということはないことを受け入れよう。完全であることが重要なのではなく、 自分のやりたいことを自分のペースでやり、楽しんで最善をつくすことが重要なのである。 

TII改訂版
TII(The Idea Inventory : Kassinove et al.1977)
早稲田大学エクスションセンター カウンセリング講座
 [認知行動カウンセリング] 配布資料(2002.5.21・28)
講師:早稲田大学文学部教授 越川房子先生




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